真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
「ねえ、真紀さん。やっぱり一日だけ、休みもらってもいいかな」
「千恵殿?」
信之と幸村は、声を揃えて不思議がる。一方の真紀は快く頷き、しばらく考えると手を叩いた。
「じゃあ、4日ならどう? 問題ないから、その日は休みね」
「うん、大丈夫。ありがとう、真紀さん」
「いいのいいの、こっちこそ正式に雇ってる訳でもないのに、バリバリ働かせちゃってごめんね」
兄弟が疑問符を頭に浮かべている間に話は纏まり、真紀は片付けを終えた車に乗って帰ってしまった。幸村は意を決し、千恵に訊ねた。
「拙者の休みなどいただいて、いかがなされるのですか?」
「あのね、幸村と信之さんは、向こうでは一緒にいられないのよね?」
「え、えぇ」
「そんなの、寂しいじゃない。信之さんだって、今回の事が終わって帰ったら、次に九度山へ来られるかどうかも分からないんでしょ?」
千恵は二人を見比べる。別れという言葉が過ぎれば、二人は全く同じ表情をしていた。しかし二人とも、互いが同じ顔をしているとは気付いていないのだ。
「向こうでどうにもならないなら、せめてこっちで思い出を作ってほしいの。こっちの世界なら、家族を引き裂く理由もないでしょ?」