真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
(お竹はお竹で、俺を心配してくれたのだな)
思い返してみると、信繁はずっと平成に入り浸りで、竹林院へ目を向ける日は明らかに減っていた。しかし、そんな彼女が信之を呼び寄せてくれなかったら、和解は出来なかっただろう。
(……申し訳ない)
竹林院は、したいようにしろと信繁へ語った。そこまで献身的に付き添う彼女を裏切る事など、信繁には考えられない。だが、心の中に抱く想いは、決して乱世だけのものではなかった。
(お竹は、俺が何を選んでもついてきてくれるだろう。しかし――)
信繁がいくら想いを寄せても、それが一方通行であるなら意味はない。相思相愛であろうと、行く道が不幸せであると見えていれば、手を掴む理由もない。
したいようにする。最も簡単な答えを選ぶだけなのに、信繁の足は動かない。
信繁は信之と対面する前と同じく悩み続けるが、答えが迫っている事を竹林院は知っていた。信之は、信繁を心配し憂う彼女に、言葉を残していたのだ。
『大丈夫です、信繁は必ず立ち直ります。信繁に振り切る覚悟がなくとも、運命は向こうから歩み寄るでしょう。あなたはただ、未来を信じなさい』
信繁を一番に理解する信之の言葉ならば、竹林院も安心出来た。必ず夜は過ぎ、太陽は昇る。信繁は俯き気が付いていなかったが、夜明けはすぐそこであった。
つづく