真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
ふてくされる信繁の肩に頭を乗せ、竹林院はさらに続けた。
「信繁様は子どものように無邪気でわがままなようで、実は誰よりも他人を思いやれる方です。信之様も仰っておりました。あの子は人に回す気を、もう少し自分に還元すべきだと」
「兄上が?」
「わたくしも、そう思います。余計な事は考えず、自分のしたいように行動すれば良いのです。皆、信繁様の本質は知っています。真にあなたを慕う者なら……あなたを信じ運命を共にしましょう」
「その結果、お前を泣かせる事になっても?」
「泣きませんよ。信繁様の行く道ですもの、そこに地獄はありません」
甘えるように寄り添っていた竹林院だが、そう語ると身を離し、深く頭を下げる。
「どうか、後悔だけはなさらぬように。それでは、信之様に来ていただいた意味がありませんから」
「兄上に来ていただいた……まさか、兄上が突然こちらへ参ったのは」
「お休みなさいませ、信繁様」
信繁の言葉を聞かなかった振りをして、竹林院は部屋を出て行く。信繁はしばらく目を丸くして固まっていたが、やがて溜め息と共に布団へと沈んだ。