真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第10章 「両腕を一生お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。
「さて、二人きりの時間を堪能したいところだが、あまり遅くまで付き合わせるのも可哀想だ。さっそく聞こうか」
「あの、聞くって何を……」
「それはもちろん、この間の返事だ」
昌幸の口調は穏やかであるが、千恵の心臓は騒ぐ。疲れ果てた体は休みたいと叫ぶが、千恵は深く頷いた。
「あの……その前に。なんだかんだで言いそびれちゃったんですけど、助けに来てくれてありがとうございました」
「なに、恭介が駆け込んできたから気付けただけだ。感謝すべきは、奴の方よ」
昌幸は恩を押し付ける事なく、控えめに答える。食えない性格の割に素直な反応で、千恵は彼の本質が見える気がした。
「それで、だ。千恵、お前の気持ちは定まったか? いや、定まったのだろう? その心、聞かせてほしい」
千恵の心は決まっている、とはいえ、事実対面すれば気まずさが生まれる。告白された時と違い、テーブルを挟んでいる事が救いだった。
「……昌幸さんが、遊びとかじゃなくて真剣に告白してくれたのは、分かってます。こんなに年の離れた人に告白されるのは初めてですけど、嬉しかったです」