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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第11章 拙者は幸村である。職はまだない。

 
「今、皆起こしてくるから待ってて。幸隆も千晶も、幸村がいなくなって随分落ち込んだんだから。すぐに顔を見せてあげて」

 千恵は幸村から身を離すと、立ち上がりドアに手を掛ける。だが幸村は待たずに、千恵と共に扉へ手を掛けた。

「拙者も一緒に行きます。一年も放ってしまいましたから、自分から詫びなければ」

「……そっか。じゃあ、一緒に行こう」

 二人は共にドアを開き、一歩を踏み出す。別れた道を、もう再び戻る事は出来ない。しかしそれを後悔する者はなかった。

 日の本一の兵と呼ばれた武士の魂は、確かに戦国に散った。しかし人は最期まで矜持を捨てなかった彼を称えた。

 そして、歴史には決して残らない「真田幸村」の人生は、平成に続いていく。妻が働き夫が家を守るという、少々変わった家庭の、平凡で幸せな人間として。武士としての魂を置いても、人を思いやり一途に妻を愛する幸村は、千恵にとって生涯なくてはならない存在だった。



おわり


 

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