真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第3章 あなたにこの生活を教えよう。
剣術の稽古も出来るような広間の真ん中で、幸村と昌幸はただひたすら正座をしていた。目を閉じ、息遣いすら感じさせないほど静かに、まるで死人のように。二人の目の前には、憎しみを隠そうとせず見下す男がいた。
静かな空間に響く、男の足音。苛つきながら左右をうろつき、報告を待つ。そしてそれは、二刻ほど過ぎた後にようやく現れた。
「田名部様、屋敷の捜索は終了しました」
「して、成果は」
「はっ、特に異常はありません。幕府に仇なすような武器も、他家と密通する書状もありませんでした」
男は頷き、部下を下がらせる。そして不意に高笑いすると、二人の目の前に立った。
「無様なものだな、かつては上田の主だったというのに。武士としての魂を奪われ、信之に飼われるだけの老犬どもめ」
すると昌幸は片目を開き、小さく溜め息を吐く。
「どうやら秀忠は、家臣の教育を怠っているようだな。徳川一の忠臣である本多忠勝殿の娘婿であり、家康公の信頼も厚い真田伊豆守を、事もあろうに呼び捨てとは。私が秀忠なら、叩き斬っているところだ」