真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
真っ赤な移動販売車に、南風感じるメキシコ料理と着物の青年。明らかに浮いた幸村の存在は、街をただ歩いているよりも目を引く。そして違和感は興味を引き、結果屋台の売上に繋がっていた。
「真紀殿、タコス三つ上がったでござる!」
片付けの手伝いを申し出たはずの幸村は、いつの間にか従業員用の帽子を被り、車の狭いキッチンに立っている。真紀は接客を中心に、幸村が調理の補助をして、行列を捌いていた。
すぐに戻るつもりが、気が付けば日が傾こうとしている。人が途切れた頃、ちょうど材料もなくなり店は販売終了となった。
「すごーい、完売しちゃうなんて初めてだよ! 幸村のおかげ、ありがとう!」
真紀は片付けを終えてエプロンを外すと、幸村に封筒を渡す。
「これは?」
「半日拘束して、何もなしって訳にはいかないでしょ。今日のお給料、いらないとは言わせないからね」
続いて真紀は紙袋を押し付け、幸村の手を塞ぐ。気持ちのいい真紀の態度に、幸村も素直に頷くしかなかった。
「真紀殿には敵わないでござるな。この紙袋は……先程のタコス、でござるか」