真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第4章 幸村は町の移動販売車でタコスを焼く係りでした。
「お父さんや梅宮さんと一緒に食べて。で、常連さんになってよ。あたし週末は、必ずここに店出してるから」
「それはもちろん。しっかり千恵殿に宣伝しておこう」
「それにしても幸村、器用なんだね。もしかして、普段から料理するタイプ?」
忙しさのあまり流れで幸村を手伝わせてしまった真紀だが、幸村の手際の良さは予想外だった。大体の仕込みは真紀があらかじめ終わらせたものだが、それでも幸村は商品として問題なく仕上げたのだ。
「拙者の知り合いが、前に茶会で話していたのです。料理の心得がないものは心が貧しい、武士たるものは料理をすべきだと」
「武士って……その知り合いも、幸村と同じで変わった人なんだね。でも言いたい事は分かるよ、あたしも料理が人生だからね」
「人生、でござるか。メキシコ……とは遠い異国でござろう? どうしてそのような国の料理を好んでいるのだろうか?」
幸村はキッチンの中だったが、覗く客の反応を見る限りこの屋台の料理は、平成の日本人からしても珍しい品物のようだった。女一人で、馴染みのない料理の屋台。並みの覚悟では出来ない仕事である。