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サイレントワールド

第10章 VS DARK PHEASANT

「…はい。」
「サンキュー。」
なぜか顔を逸らしている伊川の手を借りて立ち上がる。
「さてじゃあ仕上げね。」
「仕上げ?」
「あれよ。」
伊川が指差したのはこちらを睨んでいる闇雉だった。
『キサマラ…ユルサンユルサンゾ…。』
歪な声で許さんと繰り返し呟く闇雉。
「生きてんのか…?」
確かに闇雉の心臓には鎌が突きたっているはず。
「勘違いしてるみたいね。さっきあたしが放った『ソウルパイル』。あれは相手の『ソウル』…まあ心臓ね。そこに『パイル』杭を打ち動きを止める技よ。だから今あの鎌に触ってもダメージは受けないわ。もっともあの鎌が相手の心臓に突き刺さってる限りだけどね。」
そう言って伊川は闇雉の体の上に登る。
「本当はあんたが倒した方が経験値は貰えるんだけど半端にスキル使ってその振動で鎌が抜けても面倒だし今回はウチがやるわ。」
スッとどこからか二つ鎌をだし闇雉の首の上に立つ伊川。
ゾクリと未来の体が震えた。
伊川の目があまりに冷たい光を放っていたから。
あのような目は今まで一度も見たことがない…。




―本当にそうか?
フッと伊川にあいつが重なる。
その瞬間伊川の鎌が交差し闇雉の首筋にピタリと当てられた。
それと同時に赤い光が鎌から漏れ出す。
その光が銀色の鎌につく血のように見える…。
伊川の声が響く。
「…地獄の審判―」








「『ヘルジャッジメント』」



ドシュッと闇雉の首が切り落とされた。
首の切断面から血が洪水のように溢れ出す。
ピチャリと密やかな音を立て伊川の鎌に血がつく。
それを無言で見る伊川。
伊川の口が動く。
「………。」
未来は動けなかった。
伊川の死に神のような立ち姿と伊川のこちらには聞こえない声で発せられた言葉に圧倒されて。
…レベルアップを知らせる軽快な音楽が滑稽に響き渡った。

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