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Gentle rain

第2章 興味

キッチンに行って、小林さんが作ってくれたビーフシチューを温める間、私はソファでぐったりしている兄さんを見つめていた。

ワインの輸入する会社をしていた両親が、海外出張の為に空港へ行く途中、交通事故に遭ったのは、私が高校生で兄が大学生の時だった。

小さい会社だったけれど、従業員200名余りの生活を守る為に、大学を辞めてお父さんの跡を継いだ兄さん。

でも現実は厳しくて、21歳になったばかりの兄さんには、ワインの知識を詰め込む事で精一杯。

守ろうとしていた従業員も、次第に会社を離れていき、今や半分になっていた。

その分もしわ寄せを、兄さん自ら埋めるように先頭を切って営業に行って、会社に戻ると書類の整理。

家に帰ってくるのは、いつも夜の21時を超えていた。

「兄さん、できたわよ。」

「う、うん。」

半分ウトウトとしていた兄さんを揺り起こして、二人でテーブルについた。

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