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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

だけどあのビルの中に入って、階堂さんの待つエレベーターに乗った時だ。

「ねえ、聞いた?社長の噂。」

「ああ、聞いた聞いた。」

おそらく階堂さんの会社の人だ。



「森川社長のお嬢様と、結婚するんでしょう?」



私は持っていたバッグを、落としそうになった。

何?

何、結婚って……

「でもまだ、付き合ってないんでしょう?」

「だとしても、ほぼ決まりよ。得意先のお嬢様よ?断るわけがないじゃない。」

私が今から、その社長に会うことも知らずに、そのOLさん達は、私にショックを残したまま、エレベーターを去って行った。


森川社長のお嬢様って、誰?

本当にそんな人と結婚するの?

私が今から、あなたに会いに行くのは、何の為?

頭が痛くなるほど、いろんな考えが駆け巡る。

もしかしたら、ただ単にこの前のお礼なのかもしれない。

そうよ。

そうだと言い聞かせても、心は晴れない。

会えば、階堂さんとの“これから”を望んでしまう。

それは明白だったからだ。

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