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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「いいんだ。来てくれたんだから。」

そう言ってあなたは、私の頬に触れてくれた。

ねえ、階堂さん。

その時私は、“時間が止まってしまったのかしら”と思ったの。

悩んでいたこと全てが、あなたの温かい手で溶かされていくのがわかった。

なのに……

「階堂さん。」

振り絞って出した声に、あなたはハッとして、その温かい手を離してしまった。

「…ごめん。」

「いいえ。」

どうして謝るの?

私はもっと、触れていてほしかったのに。

「ここに来るまで、迷わなかった?」

「迷ったけれど、受付の近くにあった案内を見て、ここまで来ました。」

受付であなたのいる場所を聞いて、兄さんから会社の社長だと聞かされていたけれど、まさかこんな大きなビルを持つ社長さんだと、思わなくて。

案内を見ながら、もしかして場違いなところに来てしまったのかもって、不安で仕方がなかった。

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