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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「行こうか。」

「はい。」

階堂さんは、私をまたエレベーターに連れていく。

そしてまた蘇ってくるあなたの噂。

聞くに聞けずに、気づいたらお店の前に立っていた。

「素敵…」

まるで夢の世界にいるような、そんな感じだった。

一言二言、会話を交わして、通された場所はお店の中央だった。

不思議な感触。

初めて来るお店なのに、以前も同じような場所で、食事をした事がある?

「ワインは飲んだことある?」

ワイン?

そう聞かれて、一気に兄さんと一緒に飲んだワインを思い出す。

「はい、兄がたまに飲んでいるものを、飲ませて貰ったことがあります。」

そして運ばれてきたワインのボトル。

グラスに注がれるボルドー色の飲み物。


ああ、私。

前にもこの場面を見た事がある。


そして私の目の前のグラスにも、その飲み物はやってきた。

軽く乾杯をして、口の中にワインを含ませた。

喉元を通る、厚みのある味と、鼻を通る果実の爽やかな香り。

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