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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「飲める?」

「はい。」

朧げに見える同じような姿の人。

そして次に見せられた料理のメニューを見て、私の手は止まった。

知っている。

なぜか私は、この料理を知っている。


「フランス料理は、どこかで食べたことがあるの?」


階堂さんの一言で、私は確信を得た。

「フランス料理なんですか?あれ?」

ああ、そうだったのね。

まだ子供だった時に、両親と兄で毎年訪れていたフランス。

そこで食べた料理に似ているんだわ。

「前に父が食べさせてくれた物があったので、それを選んだのに。私が選んだ物、間違っていませんでした?」

「否。逆に大正解だったよ。」

それを聞いて、私は嬉しくなった。

突然帰らぬ人となってしまった父親が、私に残してくれた楽しい思い出を、階堂さんは何も言わずに受け入れてくれたから。

料理を食べている時も、階堂さんは私と父親の思い出に、気を使ってくれたわよね。

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