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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

「美味しい?」

「はい、美味しいです。」

「お父さんと食べた料理、思い出した?」

あなたのその一言が、本当に本当に嬉しくて。

初めて会った時に感じた、瞳の奥の優しさは、間違いじゃなかったのだと気付いた。

「なんとなく。思い出しました。」

「それは…よかった。」


ねえ、階堂さん。

普通男の人って、あまり父親の話をされるのって、嫌じゃないの?

それとも私がまだ大学生だから、子供だと思って、一緒に感傷に浸ってくれているの?

どんなに聞きたくても、言葉に出して聞けない。

だってその後の会話も、大学の話ばかりだし。

階堂さんにとっては、私はただの知り合いの妹。

ずっと年下の大学生。

話を聞いてくれるのは、自分の大学生時代を懐かしく思うから?

やっぱり、私ではあなたの相手にはならない。

そんな事を勝手に思って、胸が痛んだ。

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