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Gentle rain

第6章 求めあう気持ち

力強い眼差し。

美貴子さんが、羨ましい程。

「だからさ、美雨。」

そこからは、私の知っている兄さんだった。

「もし、美雨の事そこまで考えてくれる人がいるんだったら、俺は反対しない。」

柔らかくて、優しい表情と声。

「うん…」

その言葉が、心の底から嬉しかった。

「ああ、早く。俺と美貴子と、美雨と美雨の彼氏と、一緒にテーブルを囲みたいよ。」

「もう!気が早いわ。」


そう言って笑ったけれど、どこかで悲しかった。


私がその場に思い描く人は、階堂さんしかいなくて。

階堂さんだったら、なんとなく兄さんも、反対はしないのかなって思うのに。

実際は、階堂さんと結ばれる事はなくて。


私は階堂さんに抱かれた事を、記憶の片隅においやろうとしている。

しばらくは消えない、階堂さんのぬくもり。

それが消えるまで、私は他の人には、付いていけない。

あの人の熱が消えるまで、私は一人で身体を持て余すしかないのだ。

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