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Gentle rain

第2章 興味

私の中で、“チャンス”っていう声がかかる。

「あっ、あのね。その話なんだけど……」

「決まらなかったんだろ?」

兄さんの返事に、私は言葉が詰まった。

「無理する事はないよ、美雨。」

「どうして?」

優しい兄さん。

けれど、私の事を何でも知っているかのように、話を遮られると、とても虚しく感じる。

「まだ大学生だろ?バイトなんてしなくたって、小遣いが足りなければ、俺が出すから。」

私は“ううん”と首を横に振った。

「美雨?」

「私、やりたい事があるの。」

両親が亡くなってから、懸命に私を守ってくれた兄さんだけれども、私は兄さんに甘えて、自分の人生を失いたくない。

「将来、お店を持ちたいの。」

「店?」

兄さんが顔を歪めた理由は、なんとなくわかる。

自分も会社を持っていて、お店を経営すると言うことが、どんなに難しい事なのか、知っているからだと思う。

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