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Gentle rain

第7章 心と体

「その後、全く……」

「いいんです。」

俺の気持ちとは裏腹に、菜摘さんは何も気にしていない様子だった。

「さっきも言ったでしょう?社交辞令だと思っていたって。」

「ああ。」

確かにそうだけれども、キスを交わした相手が、社交辞令で食事に誘うと、本気で思っているのか?

「いや、あれは……」

「ほら、席空きましたよ。」

店員さんに呼ばれて、俺達二人は、お店の奥のテーブルの席に通された。

「あの、菜摘さん。」

タイミングがいいのか悪いのか、注文したパスタが、席に座ってすぐに出てきた。

「ご注文はお揃いでしょうか。」

「はい。」

「ごゆっくりどうぞ。」

店員さんが席からいなくなると、菜摘さんは嬉しそうに、スプーンとフォークを手に取った。

「はい、どうぞ。」

菜摘さんに手渡されたその二つを、俺は無言で受け取った。

「……どうも。」

受け取ったスプーンとフォークを手元に置き、俺は添えてあったレモンをパスタの上に絞った。

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