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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

「あなたは、父をご存じなのですか?」

弱々しく尋ねたきた夏目の態度に、正直もう少しで親しくなれると確信した。

「ああ。若い頃に随分よくしてもらってね。」

だが、すぐに失敗したと思った。

夏目は“やっぱり”という顔をして、下を向いてしまったからだ。

「あっ、誤解してほしくないな。君のお父上との思い出を語ろうと言ってるわけじゃないんだ。」

俺のその言葉に、再び顔を上げた夏目は、ポカンと呆気に取られた表情をしていた。

「あくまで、同じ社長というポストに就いている者同士、これからの経営方針とか、話せたらと思っているんだが。」

「僕とですか?」

夏目は大きな目をパチクリさせている。

「ご冗談。そんなに僕への気遣いは不要ですよ。」

「なぜ?」

即座に聞き返した俺に、夏目は新しいシャンパンを、渡してくれた。

「もちろん、お会いしたしたのは今日が初めてなので、僕はあなたの人となりを全て知っているわけではありません。」

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