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Gentle rain

第8章 優しい雨

敦弥さんが、突然家を訪ねてきてから、会えなくなってしまった。

兄さんに言われて、棚の奥から兄さんのお気に入りのワインを出して、二人の間にも積もる話があるだろうと、リビングを出たのが最後。

あのリビングを出る間際、敦弥さんの背中を見たのが、目の奥に焼き付いている。


『ただ今、電話に出ることができません。ご用件のある方は…』

何度、この留守電を聞いただろう。

「敦弥さん…」


この一週間、ずっとこの留守電で我慢してきた。

でも、もう待てない。

たった一言でもいいから、敦弥さんの声を聞きたい。

ピーっと言う音と共に、私は留守電に声を吹き込もうとした。

「敦弥さん…元気にしてる?ちゃんと、ご飯食べてる?……」

そんな言葉しか言えなくて、本当に言いたい事が言えない。



― どうして急に、会ってくれなくなったの? ―



私に飽きたの?

それとも、他に好きな人でもできたの?

わからなくて、涙が出てくる。

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