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Gentle rain

第8章 優しい雨

涙をこぼしているうちに、録音は終わってしまった。

心が空っぽなまま、電話を切る。

そんな時、部屋のドアをトントンとノックする音が聞こえた。

涙を拭いて、私はドアを開けた。

「はい。」

「美雨。」


てっきり小林さんだと思っていたのに、そこに立っていたのは、誰でもない兄さんだった。

「入ってもいいか?」

「…うん。」

何の用だろうと思いながら、兄さんを部屋の中へと通す。

部屋の真ん中で、立ちつくす兄さんに、私はテーブルの傍に座るように促した。

女の子の部屋の中で、ちょこんと座る兄さんは、まるで生徒の部屋に迷い込んだ教師のようだった。

「どうしたの?兄さん。」

「ああ……」

何も話そうとせず、兄さんはテーブルの上に、自分の腕を置いた。

「…なんだか慣れないな。美雨の部屋に来たのは、高校生以来だよ。」

「ああ……」


あの時、私はまだ小学生で、親に叱られて部屋で泣いていた。

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