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Gentle rain

第8章 優しい雨

「私に何かできること、ある?」

「ない。」

その即答ぶりに、力が抜ける。

「じゃあ、強いて言えば、こうやってまた一緒に風呂入って。」

「お風呂?」

「で、身体洗いっこする。」

「そんなこと?」

「そんなこと。」

私はもっと、敦弥さんの仕事で、手伝ってあげたいのに。

「美雨。笑顔笑顔。」

敦弥さんは私の不貞腐れた顔を、両手でビヨーンと伸ばした。

「痛いよ、敦弥さん。」

そのやり方が、子供みたいで、また笑えた。

「そうやって、俺の隣で笑っているのが、俺の為に美雨ができること。」

そう言って敦弥さんは、頭を撫でてから、私のおでこにキスをした。

「それだけ?」

「それだけって、結構重要なことですよ?美雨ちゃん。」

急に“ちゃん”付けなんかして、変なの。

「男はね。好きな女の子の笑顔の為なら、頑張っちゃう生き物なんですよ。」

その時の敦弥さんの笑顔。

胸がきゅんとして、できるなら写真に撮っておきたいくらいに、カッコよかったと思った。

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