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Gentle rain

第8章 優しい雨

その日も、いつもと同じように仕事が終わり、お店を出た。

自分は、恋しい人から連絡がない時でさえ、こんなにも冷静に仕事ができる人間だったのかと思うと、可愛げもないように思える。

ふと着信音があって、急いで携帯を見ると、知らない番号からの電話だった。

無視して携帯を切ると、また同じ番号から着信がある。


誰?

もしかして、間違い電話?


思い切って、私はその通話ボタンを押した。

「はい。」

『ひどいなぁ~。電話切っちゃうなんて。』

背中がヒヤッとした。

間違い電話なんかじゃない。

『何?もしかして怖がってる?俺のこと、忘れちゃった?』


この声。

耳元で響く声。

知っている。

私はこの声の主を知っている。


『忘れるわけないよね。』

電話の向こう側と、すぐ側から聞こえる声が一緒になった。

すぐ近くにいる。

私は、後ろを振り返った。



「自分の初めての相手を、忘れるわけないよね。」

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