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Gentle rain

第8章 優しい雨

その顔は、2年前。

私の家に突然現れた、兄の友人。

三科紘文だった。


「久しぶり。しばらく会わないうちに、また綺麗になったね。」

そう言われ、自分に伸びてきた手を、私は振り払った。

「あれ?こんな乱暴なこと、するような子だったっけ?」

振り払われた手を見せびらかして、三科紘文は面白そうに笑った。

「何の用ですか?」

バッグを強く握りながら、震える声を抑えた。

「はははっ!怒った顔も可愛いね、美雨ちゃん。」


薄気味悪い笑顔。

人をもてあそんで、楽しむような人間。


「あのさ。最近、君のお兄さん。家に帰って来ないでしょう?」

「帰って来てますよ。」

私はわざと嘘をついた。

すると急に冷たい目線が、私に降り注がれる。

「ダメだよ、美雨ちゃん。嘘をつくと、後で怖い目に遭うよ。」

私が何を言っても、この男には通用しない。

「……兄が帰って来ないからと言って、何だと言うんですか?」

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