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Gentle rain

第9章 雨あがり

席に戻った後、事務員の女の子が笑いながら、応接室を片づけてくれた。

「またあのセリフ言われてましたね。階堂さん。」

「仕方ないよ。事実なんだから。」

早速あのご夫婦の為の、見積書を計算する。

「階堂さん、この会社に来る前は、ご自分で会社を経営されてたんでしょう?」

隣の女の子が、しゃしゃり出てきた。

「ああ、そうだよ。」

「じゃあ、社長さんだったの?」

「そうなるかな。」

そこで近くからキャーという声が飛び交う。

「それじゃあ、女なんてより取り見取りじゃないですか。」

若い同僚が、からかいついでに言ってきた。

「まさか!仕事仕事で女と遊んでる暇なんて、なかったよ。」

「へえ~」

若い奴らに混ざって、一から営業をするのは、正直大変だと思ったが、この環境にも慣れた。


あれから出会いがなかったわけじゃないけれど、心のどこかで美雨の事が気になって、恋愛には踏み切れなかった。

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