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Gentle rain

第9章 雨あがり

「美雨さん、あなたの今の姿を見て、別れを決心したのよ。」

胸がズキッと痛んだ。

「今のあなた…あなたらしくないって。階堂さんにはもっと生き生きと仕事をしてほしいのよ!!」


足の力が抜けて、まだ来ないエレベーターの前に、しゃがみ込んだ。

「私もこれ以上、あなたの苦しむ姿を見たくないわ。もう終わりにしましょう?」


俺が苦しんでる?

そうだ。

確かに俺は苦しくて、いつもいつももがいている。

だけどそれは、他の誰でもなく……

美雨を幸せにしてやりたくて。



「ごめん。」

俺は菜摘さんに謝ると、立ち上がって非常階段への扉を開き、一気に階段を駆け降りた。

「階堂さん!」

遥か遠くで菜摘さんの声がしたけれど、構っている暇はなかった。

今、走らなければ、俺は一番大切なモノを失ってしまう。


待ってくれ。

俺を置いて、一人で行かないでくれ。

そんな祈る気持ちで、夢中で階段を降りた。

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