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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

『有難うございます。』と言って席に座ると、隣の席に座った森川社長から、グラスを渡された。

受け取ると、森川社長はテーブルの上のウィスキーを手に取る。

蓋を開けて、“ほら、飲め”と言わんばかりに、差し出してくる。

ウィスキーはあまり好みではないが、森川社長のお酒は断れない。

スッと前に出したグラスに、森川社長は並々とウィスキーを注いだ。

「寂しいもんだな。」

「いつもの事ですから。」

俺がそう言うと、社長は大きな氷を一つ、グラスの中にポンと落とした。

自分のグラスにも、俺と同じような事をし、二人で乾杯をした。

「女はもういらないか?」

「いえ…いずれは家庭を持ちたいと思っているので。」

うんうんと頷く社長に、なぜか夏目の父親とは違う安心感を覚える。

「ところで、今度家へ来ないか?」

「森川社長のお宅ですか?」

急に話の方向がずれたな。

「なあに。女はいずれ近寄ってくるさ。その前に、君との交流を深めたいのだよ。」

森川社長は、そう言って俺の肩を叩いた。

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