テキストサイズ

Gentle rain

第9章 雨あがり

ふふふっと笑った彼女が、急におとなしくなる。

彼女の背中に触れた俺の手も、なんだか熱く感じた。

「……敦弥さん、変わらないですね。」

「美雨も変わらない。相変わらず綺麗だよ。」



あの日、雨の日。

君に初めて会った時から。

美雨の美しさは、そのままだと思った。


「……奥さまはお元気ですか?」

「奥様?」

「ご結婚されたんでしょう?お子さんも生まれてたりして。」

寂しそうに笑う美雨の姿が、そこにはあった。


「俺、結婚はしてないよ。」

「えっ?」

「菜摘さんとは、結婚しなかったんだ。あの会社も潰れて、今はサラリーマンの身。」

両手を広げて、美雨の前で売れないコメディアンの真似をした。


「美雨は?付き合ってるヤツとか、いるんだろう?」

「ううん。」

美雨は首を横に振った。

「いないわ。敦弥さんと別れてから、いろんな人と出会ったけれど、付き合える人なんていなかった……」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ