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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

運んできたお皿を、テーブルに静かに置いたその女性は、立ち上がると、深くお辞儀をした。

「娘の菜摘だ。」

紹介された菜摘さんは、軽く会釈をした。

「32にもなると言うのに、まだ独身でね。」

菜摘さんは、父親である森川社長を、軽く睨むような仕草をした。

「勿体ないですね。お綺麗な方なのに。」

俺がそう言うと、菜摘さんは恥ずかしそうに、うつむいた。

「君もそう思うか?」

森川社長は、俺のセリフに身を投げ出した。

「我が娘ながらね。本当にそう思うんだよ。」

どうやら、森川社長の自慢のお嬢様らしい。

だが、これ程美しい人なら無理もない。

「だがね。付き合っていた男がろくな男ではなくてね。」

「お父さん!!」

さすがの菜摘さんも、今までは黙って父親の言う事を聞いていたようだが、このセリフは気に障ったらしい。

「すみません。父がつまらない事を言って。」

“いいえ”と首を横に振ったが、正直あまり興味はなかった。

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