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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

もし仮の話として、10年前に彼女に出会っていたのであれば、もちろん一度デートにでも誘っただろう。

だが俺も35歳だ。

女を見た目で判断するのは、もう飽きた。

美しいだとか、スタイルがいいだとか、名家のお嬢様だとか、そんなことどうでもいいんだ。

要するに面倒な事は言わずに、男についてくるか。

それだけでいい。

後は、相手が好き勝手に日常を過ごしてくれればいいんだ。


「そうだ、菜摘。」

森川社長は、何かひらめいたように、ワクワクし始めた。

「階堂君に、庭を案内してやってくれないか?」

『えっ?』と小さな声を上げて、菜摘さんは俺をチラッと見つめた。

彼女はおそらく、俺の出方をうかがっているようだ。

「いいですね。お願いします。」

先手を切った俺に、菜摘さんは驚きの様子を見せた。

俺が庭なんぞに興味を持つなど、論外だと思っていたのだろう。

しばらくして彼女は、庭に続く窓を、俺の目の前で開けてくれた。

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