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Gentle rain

第3章 愛してるの基準

俺がそう言って営業スマイルを見せると、菜摘さんはにっこりと笑った。

「ええ。そうですね。」

父親を誉められて嬉しいのは、娘の性なのかもしれない。

いや、女性みんなが自分の父親を誉められて、嬉しいわけではないだろうが、少なくても菜摘さんは、嬉しいと思える人なのだろう。

彼女の笑顔は屈託がなくて、癒されるものだった。

「もう一つ、森川社長のご自慢がありましたね。」

「え?何ですか?」

菜摘さんはくるっと、表情を変えた。

「さて、何でしょう。」

「もう!教えてください!!」

まるで今日会うのが初めてではないかのように、二人はふざけながら、庭の道を歩いた。

「本当にご存じないのですか?」

「ええ。父が仕事と庭以外の話をするところなんて、見たことがありませんから。」

菜摘さんはそう言うと、庭にある橋の上に、飛び乗った。

「あなたですよ。菜摘さん。」

すると菜摘さんは、ゆっくりと俺の方に振り向いた。

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