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Gentle rain

第5章 初めての夜

一人エレベーターに乗り、一番下まで降りながら、受付にいるという若い女の子の事を考えていた。

誰だろう。

ここ数年、若い女の子とデートなんて、しかも食事すらした事がないのに。

“かわいい子だといいですね。”

秘書の子の何気ない一言に、ニヤつく。

いやいや。

何を期待しているんだ。

相手はただ落し物を届けに来てくれただけだぞ。

そこへチンというエレベーターの音と共に、扉が開く。

一応入口付近を見渡しながら、受付へと近づく。

「忘れ物を届けてくれた方ってどこにいる?」

受付の子が立ち上がると、入口の影からひょこっと女の子の姿が見えた。

「あちらにいらっしゃる夏目様という方です。」

「夏目?」

その聞き覚えのある名前に、人知れず心臓が鳴りだす。

落ちつけ。

まだ“彼女”と決まったわけじゃないんだ。

そう言い聞かせた瞬間、俺の心臓が一度だけ大きく、ドキンと脈打った。

「階堂さん。」

「……美雨ちゃん?」

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