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Gentle rain

第5章 初めての夜

ああ、今日はなんていい日なんだろう。

そう思いながら、彼女に近づく。

「よくこの会社がわかったね。」

「はい。兄に聞いたんです。」

「そうか。夏目は知っているんだっけ。俺の会社。」

普段よりも口調が優しくなる。

彼女の、ふんわりした空気が、そうさせるんだ。

「そうだ。これ。」

彼女は持っていたバッグから、黒い手帳を取り出した。

「それ、俺の……」

「はい。お店に落ちていました。それと……」

「ん?」

彼女の瞳が、俺の目線から逃げる。

「勝手に中身を見てしまって、ごめんなさい。誰が落したのか知りたかったので。」

「ああ、いいよ。それぐらいの事。」

本当は会社のスケジュールが書いてあるから、他の人に見られるとまずいけれど、彼女だったらまだ大学生だし、気を病む事はないだろう。

「ありがとう。本当に助かったよ。失くして困っていたんだ。」

「それはよかったです。わざわざ届けに来た甲斐がありました。」

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