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Gentle rain

第5章 初めての夜

まだそう遠くには行っていないはず。

急いで辺りの道を探した。


しばらくして、道を曲がろうとしている彼女を見つけた。

「美雨ちゃん!!」

必死に叫んで、必死に走った。

曲がり角で一旦止まると、誰かが俺に声をかけた。

「階堂さん。」

顔を上げると、そこには必死に呼び止めた彼女の姿があった。

「どうか、したんですか?」

持っていたバッグを、両手でぎゅうっと握りしめている。

「明日、やっぱり予定空けてくれないかな。」

「えっ?」

突然のお願いに、彼女は困っている。

「あの……明日、バイトが入っていて……」

「何時に終わるの?そんなに遅くまで働かないだろう?」

「それが……9時までのシフトで……」


9時?

飲食店でもない普通の雑貨屋が9時まで仕事?

“ウソだろう”と思いながらも、彼女の本当に困った顔を見ると、それ以上言えない。


「待ってるから。」

彼女の瞳に、涙が浮かぶ。

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