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Gentle rain

第5章 初めての夜

「楽しんで頂けましたか?遠くから拝見させて頂いてましたけれど、あまり料理を召し上がっていなかったみたいですね。」

「あっ……料理。」

人との話に夢中になっていて、食べる事を忘れていた。

「あら?その袋……」

そしてタイミング良く、見つかってしまう。

「もしかして、私への……」

そこまで言いかけて、菜摘さんは言葉を変えた。

「ごめんなさい。図々しくて。なんだかプレゼントの催促みたい。」

「いや。そんな事ないですよ。」

俺はその袋を、菜摘さんの目の前に、差し出した。

「お誕生日、おめでとうございます。菜摘さん。」

半信半疑に受け取った菜摘さんは、中身を見て、少し笑顔を見せた。

「有難うございます。中身、見てもいいですか?」

「どうぞ。」

菜摘さんは、そっと袋から包みを取り出して、留めてあるテープでさえ、綺麗に剥がそうとしていた。

「まあ、素敵。」

彼女に選んでもらったキャンドル。

菜摘さんが気に入ってくれたかどうかは、その満面の笑顔を見れば、答えはわかった。

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