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Gentle rain

第5章 初めての夜

そこで俺の体が一息ついたのか、お腹がグーっと鳴った。

「すみません。」

「ふふふっ。いいんです。」

こんな時にお腹が鳴るなんて、ものすごく恥ずかしい。

だが菜摘さんの柔らかい笑い声が、その恥ずかしさを紛らわせてくれた。

「何か召し上がります?」

「いいんですか?」

この際、パーティーの残り物でもいいから、食べさせてほしい。

「こちらへどうぞ。」

そう言って菜摘さんが連れて行ってくれてたのは、森川邸の庭から入る事ができるキッチンだった。

「そこへお座りになってください。」

「はい。」

言われるがまま、俺は近くにある椅子に座った。

パタンパタンと、菜摘さんは何度も冷蔵庫を開けては、トントンと包丁で切る音がした。

おそらく菜摘さんは、日頃から料理をしている人なのだろう。

やけに手際がいい。

だがそれもそれで、俺には意外だった。

あの森川社長なのだから、娘を溺愛して、料理なんてさせないだろうに。

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