テキストサイズ

Gentle rain

第5章 初めての夜

菜摘さんが自分の胸元へ、手を引いた時だ。

すかさず、その手を柔らかく右手で握った。

「お世辞なんかじゃない。本当に綺麗だと思っているよ。」

その勢いで、菜摘さんの体を俺の両腕の中に、引き寄せた。

菜摘さんの華奢な肩が、すっぽりと入る。

「あなたをこの腕で抱きしめる事ができるなんて、俺は贅沢者だ。」

「そんなこと……」

菜摘さんの心臓が高鳴りが、俺にも伝わってくる。

「あなたを取り囲んでいた男達の一人が言ってた。菜摘さんは高嶺の花だって。」

俺の胸の中で、激しく首を横に振る菜摘さん。

「私は、高嶺の花なんかじゃないわ。いつも私をここから連れ出してくれる人を、探しているんですもの。その証拠に……」

「その証拠に?」

菜摘さんは、俺の胸に埋めていた顔を上げた。

「階堂さんが、その人かどうか、確かめたくて仕方がないわ。」

「どうやって確かめるの?」

「……イジワルね。知っているくせに。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ