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Gentle rain

第5章 初めての夜

「かしこまりました。」

秘書の子は、頭を下げると自分のパソコンが置いてある部屋へと、戻っていった。

ふと、森川社長の顔が浮かぶ。

昨日の今日で、この大量発注は、何を意味するのか。

偶然なのか、それとも……


俺は電話機の受話器を上げると、秘書の子に内線をかけた。

『はい。』

「さっきの発注書、発注日はいつになってる?」

『お待ち下さい。』

しばらくの沈黙の後、秘書の子から伝えられた日付は、今日の昼間だった。


昼間……

菜摘さんから届いた、メールの時間と重なる。


森川社長は、急を要する時でも知り合いに頼んだりするような方ではない。

しかも、こういった会社の備品に、お金をケチるような人でもないだろう。

むしろ目的は、別な部分にあるはず。


「…そのデスクには、同じシリーズの棚があっただろう。」

『はい。』

「それをサービスでつけてやってくれ。」

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