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Gentle rain

第5章 初めての夜

『はい。』

秘書の子の乾いた返事。

そこには、何の感情もない。

俺は受話器を置くと、もう一度携帯を見た。

菜摘さんからのメール。

森川社長はおそらく、何らかの形でこのメールの存在を知っているのだ。

俺は、あまり得意ではない、携帯でのメールを菜摘さんの為に、打ち始めた。

【気に入って頂いて、嬉しいです。
それよりもパーティーの夜は、とても思い出に残るものとなりました。
今度は、外でお食事しましょう。】

俺は2、3回、携帯を振った後に、メールを送信した。

確信犯。

それは森川社長なのか、俺なのか。


森川社長は、菜摘さんの事がなくても、俺の事を気に入って下さっている。

無論、俺が菜摘さんと結婚しようとしまいと、あの人は変わらずに、接してくれるような気がする。

それでも、小さな胸騒ぎは収まらなかった。

俺の中で、何かが動き始めた。

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