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Gentle rain

第5章 初めての夜

「でも、私が来るまで待ってるって、階堂さんが言ってくれたから…私……」

来るべきなのか、それとも無視するべきなのか、迷った時に彼女が信じたのは、俺の何気ない一言だったのかと思うと、俺の足は自然に、彼女へと近づいていた。

「いいんだ。来てくれたんだから。」

そっと、彼女の頬に触れた。

柔らかくて、白い肌。

俺の手が触れた先から、溶けていきそうだ。

「階堂さん。」

彼女の声が、俺を現実に引き戻す。

「…ごめん。」

「いいえ。」

彼女に触れていた手を引いて、ポケットの中に入れる。

「ここに来るまで、迷わなかった?」

「迷ったけれど、受付の近くにあった案内を見て、ここまで来ました。」

彼女が来てくれた嬉しさと、はにかんだ笑顔が尚一層、俺の心の不安を解かしてくれた。

「行こうか。」

「はい。」

女性との食事なんて、腐るほど経験してきたと言うのに、彼女との食事と思うだけで、心地よい緊張が身体の中を駆け巡った。

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