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Gentle rain

第5章 初めての夜

「あまりにも美味しそうに食べるものだから、つい。」

「ええ!やだ、恥ずかしい。」

彼女は少し頬を赤くして、手で顔を煽いでいた。

本当はそんな事で、君を見ていたんじゃない。

滑らかな仕草に、ほんのりとした色気を匂わせる落ち着いた雰囲気、コロコロと変わるその表情に、俺はすっかり目を奪われているんだ。

「美雨ちゃんは、大学生だっけ。」

「はい。大学二年生です。」

「バイトは順調?」

「はい。」

俺の質問に、YESしか答えない彼女は、まだ俺に心を開いていないのかとも思う。

「美雨ちゃんは、大学を卒業したら、どうするの?」

彼女の事だから、夏目のコネで一流企業にでも就職するか、自分の家の会社に就職するか。

いずれにしても、彼女の将来は半分決まった物。

俺は勝手にそう思っていた。

「私、大学を卒業したら……」

「うん。」

「…今のアルバイトの仕事を、続けてみたいんです。」

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