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Gentle rain

第5章 初めての夜

予想外の答えだと思った。

「今のバイトって、雑貨の?」

「はい。」

純粋なお嬢様だと思っていた彼女が、全く無関係の仕事をやりたい?

「私、いつか自分のお店を持ちたいんです。」

「自分の?店?」

それ以上、言葉が出てこなかったのは、それまで俺の知っている彼女ではない彼女が、そこにいたからなのか。

「私の言っていること、おかしいですか?」

「あっ、ううん。違うんだ。」

慌てて否定をしたけれど、彼女は心なしかシュンとしている。

「なんだろう。美雨ちゃんは、お嬢様だと思っていたから。」

「お嬢様って、どういう意味ですか?」

真っ直ぐに、疑問を投げかけてくる彼女は、そのまま俺の心まで、捕まえてしまった。

「……世間知らずって事ですか?」

その時だった。

俺はもう彼女を、夏目社長のご令嬢だとか、夏目の妹だとか、そんな物で飾ったりするのは、よそうと思ったのは。

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