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Gentle rain

第5章 初めての夜

「ごめん。俺が間違っていた。」

シュンした彼女が、少しだけ顔を上げてくれた。

「君は大学生なんだよな。俺からすれば、まだまだ世間知らずなのは、当たり前。」

「はい……」

「それをお嬢様だからと決め付けた、俺が悪かった。すまない。」

“ううん”と彼女は、首を横に振った。

「許してくれる?」

「はい。」

ああ、今抱きしめたいくらいに可愛いと思ってしまう。

「でも、実は兄も同じように、あまりいい顔はしないんです。」

だろうな。あの夏目じゃあ。

「あいつは美雨ちゃんの事、誰よりも大事に思っているからな。心配なだけだよ。」

「そうなんですか?」

やっと彼女から、クスクスという笑い声が聞こえてきた。

「よし!俺が美雨ちゃんを応援するよ。君が自分の店を持つまで、俺がバックアップしてあげるって。」

「ええ?」

驚いた表情を見せた後に、またクシャっとした笑顔になる。

彼女をこれからも、近くで見ていたいと思った。

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