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Gentle rain

第5章 初めての夜

お会計を済ませて、お店の外へ出ると、彼女は二階の奥の窓を見上げていた。

「美雨ちゃん。」

俺の呼びかけにも気づかないくらいに、彼女は何かに夢中だった。

「美雨ちゃん?」

側に行って、彼女が見ている物を、一緒に眺めた。

「花火?」

遠くで上がっている花火が、ちょうど2階の大きな窓から、夜空に咲く花のように見えていた。

「綺麗……」

そう言った彼女の顔を見ると、自分でも笑ってしまうくらいに、クサいセリフが頭の中に浮かんだ。

「階堂さん?」

ふいに呼びかけられて、ドキッとする。

「いや、何でもない。行こうか。」

「はい。」

そう返事をした彼女なのに、まだその花火を目に焼きつけようと、その場を離れようとしない。

その姿を見て、俺は彼女に一つの提案を持ちかけた。

「ねえ、美雨ちゃん。もっと花火が綺麗に見える場所知っているから、連れて行ってあげようか。」

「えっ?どこ?」

俺は真っすぐに、上を指さした。

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