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Gentle rain

第5章 初めての夜

何か面白い物を見つけたかのように、俺はエレベーターの前で、彼女に手招きをした。

「来た。早く乗って。」

戸惑っている彼女の手を握り、エレベーターの最上階のボタンを押した。

花火が終わってしまう前に、早く、早く、彼女をその場所に連れて行きたかった。

ちらっと見た彼女は、ずっとエレベーターが昇っていく様子を見ていた。

何気なく繋いだ手。

振り払うでもなく、握り返すわけでもなく。

ただただ、今の状況に自分を合わせて。




ねえ。

君は、ホントのところ……



その時、エレベーターがチンッと鳴った。

最上階に着いた合図だ。

「どうぞ。」

繋いだ手を引いて、彼女を先にエレベーターから、降ろさせた。

部屋へと通じるドアを目の前にして、彼女は一瞬躊躇した。

そんな彼女に、後ろから囁いた。

「もう少し待ってて。今、君へのプレゼントの鍵を、開けてあげるよ。」

そう言って彼女の両腕を上から下へ撫でると、目の前でドアの鍵をカチャッと開けた。

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