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Gentle rain

第5章 初めての夜

そんな彼女を、ずっと見つめていた。

誰もいない、たった二人だけの世界で、彼女は俺だけに笑ってくれている。

ふと彼女は笑うのを止めて、だんだんと俺に顔を向ける。

「階堂さん?」

暗闇の部屋の中、打ちあがる花火が、彼女の美しい顔を照らし続けていた。

初めて夏目の家で彼女を見た時、そのマシュマロのような白くて柔らかそうな肌に、瞳を奪われた。

「あの…こんなに近い場所で見つめられると、困ります……」

「どうして?」

すると彼女は、本当に恥ずかしそうに、顔を両手で覆った。

「だって、階堂さんに今日会えると思ったら緊張しちゃって…あまり眠れてないから、目の下にクマとかできて……」

「どこに?」

スッと彼女の顎に右手を添えて、少しだけ上に上げる。

「階……堂……さん」

花火が上がる度に、彼女の瞳に俺が映っているのが、見える。

彼女との距離が、少しずつ少しずつ近づく。

そして大きな花火が上がった瞬間、俺達は唇を重ね合わせていた。

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