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同じ空の下で

第22章 湖

湖のほとりで

風に揺れる木々を眺めながら

この言葉を綴ります




この湖は

本当はとても思い入れのあるところ

小さい頃に

家族と来たことがあります


曖昧な記憶だったけど

一人暮らしをしはじめて

ここに来たとき



景色と、その時の記憶がリンクして


ここだったんだ…と

涙が出ました



湖の周りの遊歩道を

借りた自転車で兄と並走したこと


池の鯉に餌をあげたこと

広い芝生で母の作ったお弁当を食べたこと


兄と父がサッカーボールを蹴る様子


ここに来て目を閉じて

その頃を思い出す時間も

私にとってはとても大切で切ない時間で


だから、ここは私の

私だけの秘密の

一人きりになれる場所



静かです



この時間には人影は全くなくて


この場所も景色も一人占め出来ている気分



もう少し

心を落ち着けて

そうしたら、帰ります



ここで一人呑み込む思いを

本当はそばにいる人に伝えないといけない…


きっと

私の言葉を待っていてくれるから



『拠り所にしてほしい』



そういってくれた時の

切ない表情を

そのままにしたらいけないのはわかってる



帰ろう


信じてついていく




うまく言えなくても

飾らないそのままの言葉で

正直に

ストレートに伝えたい


手に届くところに咲く一輪の花水木を

連れて帰ろう




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