たゆたう草舟
第3章 誤解と裏目とまた誤解
振ってくださったのは有り難いですが、あの様子ではもう誤解を解く事は敵わないでしょう。信繁様の性格を考えれば、しばらくお話する事すら敵わないはずです。
私のときめきは戸惑いに変わり、一日が終わりました。なんとも賑やかで、目の回るような一日でした。
ですが、この日以来、私の日常は嘘のように静まり返りました。信繁様が私を避けるようになったため、真田のお家に関わる話を聞く事は出来なくなりました。また信明様も、あれ以来私に近付く事はなくなりました。
昌幸様にも、出会う事はありませんでした。元々そう簡単に顔を合わせられる方ではないのです。それが当たり前でした。
あのため池に行けば、もしかすれば会えたかも分かりません。しかし私は想いを告げるつもりはありません。ならばわざわざ、会おうと画策する必要はありませんでした。
ですから、私は真田の情勢がまたも不安定になっている事を、早くに察知は出来ませんでした。年が明け、新年を迎え――人伝に信明様が須貝様の娘と昨年の内に結婚していたと聞いた頃、ようやく気付いたのです。
つづく