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たゆたう草舟

第4章 落葉の風

 






 上田城は、上杉に対抗するためのお城です。ですので当然、守りを固めるのは上杉側のはずでした。しかし着々と進む城は、上杉が現れるであろう北西より、徳川に近い東側が堅牢になっているような気がしたのです。

 その事を同じ奉公人である妙(たえ)に話したところ、返ってきたのは信じがたい話でした。

「徳川との関係を、解消……?」

「なんだか徳川が沼田を北条に差し渡すよう命じられたらしくて、それに昌幸様が反発したらしいわよ」

 沼田といえば、昌幸様が自力で切り取った領土です。それを北条に差し渡せなど、昌幸様が怒りを覚えるのは当然です。真田は徳川に臣従しましたが、徳川の犬ではないのです。ですが、徳川との手切れは、あまりに無謀でありました。

「じゃあ真田は、どうするの……? この時代、ただ独立するだけでは生き残れないじゃない。真田は織田、北条、徳川と主家を変えているし、この先受け入れてくれる家なんて……」

 臣従と離反、繰り返していたら信用を失うのは明らかです。ましてや北条と徳川は同盟を結んだ後。対抗出来る大名など、もはや上杉家しかないでしょう。
 

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