たゆたう草舟
第4章 落葉の風
「今は徳川と羽柴が睨み合ってるから、すぐにどうこうはならないんじゃない? とにかく、真田が滅びなきゃ誰が勝っても、あたしは構わないわ」
妙は冷めた様子で、仕事に戻ります。確かに私達が思案したところでどうにもならないのですが、不安は拭い去れませんでした。
私はその日、ため池の辺りに足を運んでみました。しかし、そう都合よく昌幸様はいらっしゃいません。いてもたってもいられなくて、私は抜け道から町へ抜け出していました。
町は、変わらず賑わっていました。しかし噂を知らない為なのか、知っていて気にしていないのか、それは私にも分かりません。そういえば以前昌幸様は町に火を掛けたら、などと物騒な事を言っていましたが、あの頃にはすでに徳川と不和だったのでしょうか。
考え事をしていた私は、いつの間にか足を止めていたようです。気を取り戻したのは、背中から何かがぶつかった時でした。
「きゃっ……」
不意の衝撃に、私は転んでしまいます。それと同時に、水が体に掛かったのです。私が顔を上げると、私に重なるように、水桶を持った少女が倒れていました。